セックスのときに痛みがあると、「うまく説明できなければ診てもらえないのではないか」「この程度で受診していいのか」と迷って、先延ばしになりがちです。けれど、相談に完成した説明は要りません。原因を自分で突き止めることも、医学用語を覚えることも不要で、「いつから、どこが、どんなふうに痛いか」を分かる範囲でメモしておけば、それが診察の出発点になります。
痛みがある行為は、理由が分かるまで無理に続けないでください。「慣れれば治る」「愛情があれば我慢できる」という話ではありません。腟への挿入時の痛みには、乾燥や緊張、炎症や感染、子宮や卵巣の病気、皮膚のトラブルなどさまざまな要因があり得て、見た目や感覚だけで見分けることはできません。だからこそ、自己判断で対処を重ねるより、医療者に確認してもらうことに意味があります。

メモは5つの欄で足りる
診察で聞かれるのは、だいたい次の範囲です。全部を埋める必要はなく、分からない欄は「分からない」と書いておけば十分です。
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| いつから | 初めて気づいた時期、続いている期間。「1か月くらい前から」「産後戻ってから」など |
| 場所とタイミング | 入口付近/奥のほう/触れたとき/挿入の途中/終わった後、など自分の言葉で |
| 痛みの出方 | 毎回か、時々か。体位や相手、体調で変わるか |
| 生活への影響 | 座る・歩く・排尿・タンポンの使用などで困ることがあるか |
| 伴う変化 | 出血、おりものの変化、発熱、かゆみ、においなど、気づいたこと |
| 使ったもの | 薬、コンドーム、潤滑剤、アイテムの名前(分かる範囲で) |

たとえば「1か月くらい前から。挿入のとき入口付近がヒリヒリ痛い。毎回ではない。終わった後もしばらく痛みが残る。検査が痛くないか心配」という短い文で、伝えるべきことはほぼ揃います。
実際に埋めた例を一つ置きます。この形をそのまま真似て、違うところだけ自分の内容に置き換えれば十分です。
・いつから:2か月くらい前から。生理の前後に強い気がする
・場所とタイミング:挿入のとき、入口付近。深く入ると奥にも響く
・痛みの出方:毎回ではない。体調が悪い日は最後までできない
・生活への影響:終わった後に排尿でしみる。座っていても気になる日がある
・伴う変化:おりものが増えた気がする。出血はない
・使ったもの:潤滑剤(製品名は不明)。コンドームは市販のもの
・聞きたいこと:検査が痛くないか先に知りたい
「気がする」「たぶん」で終わる書き方でも構いません。確信が持てない部分を正直に曖昧なまま書くほうが、医療者には正確に伝わります。
記録のために痛い行為を繰り返して「再現」する必要はありません。思い出せる範囲で構いませんし、写真を自分で撮って送ることを受診の条件にする必要もありません。メモを作ること自体が負担なら、何も書かずに行き、「うまく説明できないので質問してほしい」と伝える方法もあります。
痛みの言葉は、場所と感覚で足りる
「痛い」以外の言葉が浮かばなくても、場所と感覚の組み合わせでかなり伝わります。表現の例を挙げます。
- 入口付近が、挿入の瞬間に「切り傷に触れたように」ヒリヒリする
- 入口が「締めつけられるように」痛くて、奥まで入らない
- 奥のほうに「響くような」鈍い痛みがある
- 途中までは平気だが、深く当たると「突かれるように」痛い
- 行為の後、排尿時に「しみる」
- 触れるだけでも「焼けるように」痛い
痛みの強さを1から10の数字で言えなくても問題ありません。「最後までできなかった」「翌日も残った」「日常生活でも気になる」といった、生活への影響で伝えるほうが、医療者にとっても状況がつかみやすくなります。
逆に、伝え方で気をつけたいのは、原因の決めつけです。「たぶん乾燥のせい」「ストレスだと思う」と自分で結論を添えると、ほかの可能性の確認が遅れることがあります。感じた事実と、自分の推測は分けて話してください。
先に連絡したほうがよい症状
次のような症状があるときは、メモを整えてから予約するのではなく、先に医療機関や救急へ連絡してください。
- 強い腹痛・骨盤の痛みが続く、痛みで動けない
- 失神、強いめまい、冷や汗を伴う
- 多量の出血がある
- 発熱を伴う痛み
- 妊娠している可能性があり、痛みや出血がある
この一覧に当てはまらなければ安全、という意味ではありません。急に悪化した、「いつもと違う」と強く感じるといった場合は、予約日を待ってよいか、医療機関へ電話で確認するのが確実です。緊急性を自分のメモで判定しないでください。

診察では、何を聞いて帰るか
緊張すると聞きたいことを忘れてしまうので、質問はメモの末尾に書いておくと安心です。たとえば次のようなものです。
- 今日はどんな診察や検査をするのか、先に説明してほしい
- 痛みが強いとき、途中で止められるか、どう伝えればよいか
- 内診や検査が不安なので、配慮してもらえることはあるか
- 次にどんな確認が必要か、いつまでに受診すればよいか
- パートナーと性行為を再開する目安はあるか
診察や検査の内容は、医療機関や症状によって異なります。「今日は話を聞いてもらうだけにしたい」「内診はできれば避けたい」という希望を伝えること自体は問題ありません。説明が分からなければ、分からない部分を聞き直してください。提案された検査について、目的や負担、代わりの方法を尋ねるのも当然のことです。
受付の段階では、詳しい症状を話す必要はありません。「性交時の痛みについて相談したいのですが、対応してもらえますか」と、相談できるかどうかを確認するところからで大丈夫です。具体的な進め方は、別記事「性の悩みは予約時にどう伝える?受付で使える短い文例と確認リスト」にもまとめています。
メモは紙でもスマホでもいい。「渡せる形」にしておく
メモの媒体に決まりはありません。紙のノートでも、スマートフォンのメモアプリでも、医療者が読み返せる形ならどちらでも構いません。口頭で話し始めて詰まりやすい人は、受付や診察の最初に「メモに書いてきました」と渡してしまうほうが楽です。渡したメモは、診察の聞き取りの土台として使われます。
ただし、メモを渡すかどうか、どこまで書くかは本人が決めることです。パートナーと共有している端末に医療のメモを残したくない場合は、紙に書いて診察後に処分する、といった扱いも選べます。メモの完成度よりも、「自分の言葉で残っていること」のほうが重要です。

パートナーへは「休みたいこと」だけ先に伝える
受診の前に、パートナーへどこまで話すかで悩む人もいます。最低限伝えるのは「痛みがあるので、その行為はしばらく休みたい」という希望だけで構いません。原因や診察内容をすべて説明することが、休む条件ではありません。
付き添いを頼む場合も、待合まで付いてきてほしいのか、受付だけ手伝ってほしいのか、診察の説明にも同席してほしいのかで希望は変わります。同席できるかどうかは施設によって異なるので、事前に確認を。パートナーに共有したくない内容があるなら、その希望を医療者に伝え、自分用のメモは共有端末を避けて保管するなど、扱い方も決めておけます。
よくある質問
潤滑剤を使えば、受診しなくてよいですか?
潤滑剤で楽になる痛みもありますが、痛みの原因は一つではありません。潤滑剤は「受診の代わり」にはならず、痛みが続く、繰り返す、ほかの症状を伴うといった場合は、使っていることをメモに添えて医療機関へ相談してください。
毎回痛いわけではないのですが、相談していいですか?
「毎回ではない」こと自体が大事な情報です。どんなときに痛むか(体調、体位、行為の内容など)に偏りがあれば、それもメモしておくと役立ちます。
一度相談したのに「様子を見ましょう」で終わり、まだ痛いです。
様子見は経過観察として正当な判断の場合もありますが、痛みが続く、強くなる、生活に支障が出ているなら、再度相談して構いません。その際は、前回の受診時期と、その後どう変わったかをメモに足して持って行くと話が早くなります。別の医療機関で改めて相談する(セカンドオピニオンを求める)ことも、失礼なことではありません。今の痛みが「相談を続ける理由」として十分だという点は、遠慮なく前提にしてください。
何科に行けばよいですか?
まずは婦人科が相談先の中心です。排尿時の痛みやおりものの変化など症状の出方によっては、案内が変わることもあります。迷う場合は受付で症状を短く伝え、対応できるか確認してください。



